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学生時代に建築設計事務所の仕事を経験する方法

将来建築の世界で働きたいと思っている学生さんの中には、建築設計事務所での実際の仕事に興味を持っている方も多いと思います。

  • 設計事務所での実務がどんなものか見てみたい。
  • 建築の世界で活躍している先輩方の声を聞いてみたい。
  • 自分に合う設計事務所のジャンルを知りたい。
  • 本当に設計の世界でやっていけるのか自信がない。
  • 設計事務所で自分の実力がどれくらい通じるのか試してみたい。

学生からも、社会人からも、このような声が寄せられます。

不安を解消し、前向きに設計に取り組むには、実際の仕事を経験するのが一番。実務を経験する方法として、インターンシップやアルバイトがあります。

ここでは、インターンシップとアルバイトの違いを紹介し、学生時代に限って経験できるインターンシップについては、仕事内容、応募する方法などをまとめます。

インターンシップとアルバイトとは?違いはどんなところ?

インターンシップとアルバイト、どちらも建築設計事務所での仕事を経験できる方法ですが、この2つには少々違いがあります。

インターンシップ

対象は、学生に限られる
建築系のインターンシップの場合は、建築、インテリア、アートなど建築に関わる学科で学んでいることが条件です。
仕事の目的
特定の業務に限らず、幅広くその企業の仕事を体験する機会を作ることがいちばんの目的。
決められたマニュアル通りにこなすのではなく、与えられた課題を解決する筋道を自分で考えて結果につなげるプロセスを求められることも。

模型製作や図面修正など、直接建築に関わるものから、クライアントとの打ち合わせ内容をまとめるなど、設計のプロセスに関わることなどもあります。

自分自身にとって成長の機会となるだけでなく、企業にとってはより自社にマッチングする人材と接触する機会と捉えていることもあります。

給与
給与は無給か、あっても低賃金のことが多いようです。
少し前は、ほぼ無給のインターンシップばかりでしたが、最近は給与が設定されていることの方が多いようですね。

アルバイト

対象者の身分や年齢に制限がない
決められた仕事について募集をかけるので、学生に限るというような制限はありません。
仕事の目的
学生にとっては、アルバイトによって給与を得ることがいちばんの目的になりますよね。建築に関連する業務で経験を積みながら、一定の給与を稼げる事は魅力の一つです。

企業にとっても、専門的な内容をこなしてくれるスタッフを雇い、マニュアルに沿った成果を出してくれることが目的になります。

給与
アルバイトの場合は、もちろん給与が支払われます。

インターンシップもアルバイトも、建築設計事務所で実務に携わらせてもらうことには変わりがありません。しかし、その内容や目的にはこのように違いがあります。

様々な企業での仕事を知りたい、専門分野で成長する機会を得たいならインターンシップがおすすめ。CADオペレーターや、OAオペレーターなどとして、特定の実務の腕を磨きつつ給与を得たいなら、アルバイトがおすすめです。

建築設計事務所でのインターンシップの仕事内容

特定の業務内容が設定されていないインターンシップでは、どのようなお仕事を経験できるのでしょうか。

模型製作

もっとも多いのが、模型製作です。大手の組織設計事務所では、学生インターンシップの模型製作なしでは業務がスムーズに進まないと言われるほど、任されることが多い仕事です。

基本設計をまとめるプロセスの中で、建物のボリュームや空間構成、動線を確認するためにつくるエスキス模型は、プランが変更になるたびに必要になります。

設計者がその全てを作ることが難しいため、学生にその仕事が回ってくるわけです。
模型製作のメリットは、何と言っても図面を見せてもらえること!

  • 敷地と建物の関係性
  • 平面図ではわかりにくい上下関係の構成
  • 実務で作成される図面の描かれ方
  • 設計者がクライアントの意向をどのように建築に落とし込もうとしているのか

など、模型製作を通じてたくさんの学びがあります。

学校で習った程度の模型製作技術でも、十分役に立つことができますので、インターンシップで模型製作の機会があればすすんで任せてもらいたいものです。

設計アシスタント

次に多いのが、CADでの図面修正のお仕事です。学生に頼まれるのは、図面修正や電気配線図の作成、仕様の書き込み、積算のための数量拾いなどが主な仕事だと思います。

学校の課題では平面図、立面図、断面図などで終わる図面作成が、実務では、さらに詳細な段階まで進んでいきます。

  • この縮尺の図面がなぜ必要なのか
  • この記号は何を表現しているのか
  • 見やすい図面はどんなものか

などを実際の仕事を通じて経験することができます。

建築系ではVector Works、計画系ではAutoCADが主流だと思いますが、経験のないソフトでも基本的な構成は変わらないので、ぜひチャレンジしてほしいです。

また、こうした図面作業を手伝わせてもらえるのは、中〜小規模の設計事務所です。
大手の組織事務所では、図面作業はCADオペレーターが担当しているので、学生に任されることは少ないようですね。

CADによる図面製作を経験したい場合は、事前に企業側に確認しておいた方が良いでしょう。

資料作成

設計をまとめる段階では、様々な事務的作業が発生します。

  • 各種申請書の作成
  • 役所での手続き書類の提出、受取、作成
  • 打ち合わせ資料の作成
  • 設備、電気、材料、造園などパートナー企業とのやり取り

など、パソコンを使って資料をまとめることがあります。

こうしたプロセスを通じ、設計を形にしていくには、様々な法的手続きが必要なことや、地味な資料作成が欠かせないことが体験できると思います。

学生時代に体験したインターンシップの一例で、外部の設備会社と電気配線計画について協議する会議に同席させてもらい、打ち合わせ内容をまとめる仕事、必要な機器を発注する仕事などを担当させてもらった、というものがあります。照明やスイッチひとつつけるのにも、利用者の特性だけでなく予算、手入れのしやすさ、メンテナンスなど、様々な視点から検討することが必要だということを理解することができます。

なんとなくかっこよさや好みで設計課題をこなすことが可能な学生にとって、とても勉強になる機会になります。

建築設計事務所のインターンシップに応募する方法

建築設計事務所のホームページを調べる

まずは、気になる設計事務所のホームページを調べましょう。中規模〜大規模の設計事務所であれば、常時インターンを募集しています。

建築設計事務所に直接電話する

ホームページなどで募集されていなくても、常に人手を探している設計事務所もあります。気になる設計事務所があれば、直接電話をかけてみましょう。

メールでも良いのですが、インターンシップに来てもらう学生の希望やスキルによって受け付ける場合もあるので、その場で相談しながら細かな点を決められる電話の方が、採用に繋がりやすいでしょう。

大学の先生や講師に問合せる

自ら設計事務所を主催している先生がいたら、ぜひインターンシップを申し出てみましょう。
学生が日常的に出入りし、様々な形で仕事を手伝いことが多いため、採用してもらいやすいです。

特別講義や課題の講評会に来られる非常勤講師の先生に問合せてみるのもよいですね。
つながりのある先生の事務所で募集がなくても、関係のある事務所を紹介してもらえるかもしれません。

先輩に紹介してもらう

学部やゼミの先輩が行っていた設計事務所を紹介してもらう方法もあります。

この場合は、先輩から事務所の様子や、経験した仕事、事務所スタッフにもらったアドバイスなど生の声を直接聞くことができるので、どのような内容の仕事が与えられるのかあらかじめイメージしやすいのが良いところですね。

地方に住んでいる学生の場合

都市部ではこうしたインターンシップの機会は豊富にありますが、地方大学の場合、建築設計事務所の数自体が少なく、なかなか機会に恵まれないという課題があります。

常時通うことが難しいので、長期休暇を利用して、インターンシップの機会を作りましょう。

長期休暇で実家に帰った際、一週間という期限付きで都市部の建築設計事務所へ通わせてもらったという例もあります。期間限定でも、インターンシップの採用は可能ですので、あきらめずに問い合わせてみましょう。

学生時代の実務経験で視野を広げましょう!

学生時代の実務経験は、これからの方向性を決める道しるべとなるだけでなく、自分自身をぐっと成長させてくれるよい機会です。

学校では、巨匠と言われる有名建築家の作品に学ぶことが多く、進路は意匠系がいい、できたら建築設計事務所へ、と狭き門を志向しがちです。

しかし、建築の仕事は、大きなプロジェクトを抱えるゼネコンから、町の住宅工務店まで幅広くあります。有名でなくても、お客様の声に耳を傾け、コツコツと設計提案をする身近な建築士もたくさんいます。

また、建築設計でなくても、ディスプレイやインテリアのみの仕事もあります。建築を学んだからと言って建築設計事務所に就職するのが正解とは限りません。

学生時代に建築に関連する仕事を経験し、視野を広げて将来の進路を考えてみましょう。