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世界一の名建築「サグラダ・ファミリア」は結局のところ何がすごいのか?

サグラダ・ファミリア(聖家族教会)は史上最も偉大な建築家アントニオ・ガウディの作品群の一つとして世界遺産に登録され、ガウディ建築の中でも最大の規模を誇ります。

この教会、実は着工当初の1882年3月当初はフランシスコ・ビリャールという全く別の建築家が設計を請け負っていましたが、1883年に意見の対立が生じてビリャールは辞任、サグラダ・ファミリアの2代目設計士として当時まだ無名だったアントニオ・ガウディが任命されました。

ガウディは単にビリャールのプランを引き継ぐのではなく一から設計をやり直すという決定を下します。そして教会らしくキリスト教のストーリーをモチーフとした「生誕のファーサード」と「受難のファサード」、そして18本の塔から成る尖塔群の三つの部分から成る現在のサグラダ・ファミリアの基本設計が完成しました。

ガウディの独創的な「構造計算方法」とは?

建築物にとって最も重要な事柄、それは構造計算であり、別の言い方をすれば長きに渡り安定して安全な強度を持つ建物であることの証明です。

シンプルな構造であれば比較的容易に構造計算することができますが、ガウディの時代つまり現代より100年以上も前のコンピュータはおろか計算機もなかった時代に、サグラダ・ファミリアのような複雑な構造の安定性を設計の段階でどのように確認したのでしょうか。

ガウディは全く新しい方法で、「安定感のある形状」を見つけ出します。

まず天井から無数の紐をUの字になるようにぶら下げます。そのU字の下端におもりをぶら下げていけば重力により無数のおもりは垂直に引っ張られ、無数に繋がれた紐とおもりは言わば洞窟の鍾乳石のような形状となります。このときに出来上がる形状を180°天地をひっくり返してできる形状が構造計算上も安定した形状であることをガウディは発見したのです。

この実験は「ガウディの逆さ吊り実験」または「フニクラ実験」として知られています。

この実験のもとに模型が作られ、現在のサグラダ・ファミリアの原型が出来上がりました。つまり建物全体が空に向かって垂直に引っ張られているかのような特徴的な形状は、デザインが先行したものではなくフニクラ実験によって現れた、構造計算上至って合理的な形状だったのです。

サグラダ・ファミリアの竣工はいつごろ?

かつては着工から完成まで300年はかかるであろうと言われていたサグラダ・ファミリアですが、現在では建築技術の発達や好調な財政のおかげで、ガウディの没後100週年にあたる2026年には完成するとされています。

またかつては実験と模型で行われていた構造計算も、現在ではコンピューターによる緻密なシュミレーションや3Dプリンタなどを駆使した模型が活用されるようになり工期の短縮を加速させる一因ともなっています。

もしも訪れるなら見所は?

サグラダ・ファミリアの地下には博物館が用意されており、そこで上記のフニクラ実験が行われた様子や3Dプリンタによる模型など、かつてガウディの頭の中で起こったであろうアイデアやイメージがどのように現実の建物になっていくかのプロセスを垣間見ることができます。

また、実際にガウディが生前に完成させたのは先述の「誕生のファサード」のみです。サグラダ・ファミリア全体のフォルムも美しいですが、ガウディによる「誕生のファサード」は特別な異彩を放っています。ガウディの没後に建設された他の部分とどのように異なっているかじっくり観察してみるならばガウディがいかに偉大な建築家だったかという証明を見つけることができるかもしれません。

ガウディは身の回りに見られる自然を「常に開かれて、努めて読むのに適切な偉大な書物である」と語っています。建物内の柱の形状、随所に施された彫刻には確かに自然への畏敬が色濃く顕れています。