石川県立図書館の見どころ|公共建築に見る光・素材・動線の工夫

2022年に新たに生まれ変わった「石川県立図書館」は、単なる“本を借りる場所”を超えた、まちに開かれた知の交流拠点です。建築としての美しさや機能性、そして地域とのつながりを意識した設計は、建築好きなら一度は訪れておきたいスポット。この記事では、石川県立図書館の建築的な魅力や、まちづくりへの貢献について掘り下げてご紹介します。

石川県立図書館とは?

石川県金沢市に位置する石川県立図書館は、2022年7月にリニューアルオープンしました。設計を手がけたのは、株式会社環境デザイン研究所。コンセプトは「まちにひらく、ひとにひらく、知の広場」。その名の通り、誰もが気軽に訪れ、知と出会い、交流できる空間が広がっています。

旧図書館の約3倍の広さを持つ新館では、蔵書の充実はもちろん、カフェや多目的スペース、ギャラリーなどの機能が融合され、図書館という枠を超えた“知の複合施設”として進化しました。

建築としての見どころ

石川県立図書館は、自然光をたっぷり取り入れる大開口や、木材を多用した温もりあるデザインが特徴的です。エントランスを抜けると、吹き抜けの大空間が広がり、天井高と開放感が来館者を迎えます。

建築構造としてはRC造(一部S造)を採用し、耐震性・耐久性に配慮しながらも、空間的な自由度を確保。各階をつなぐ階段やスロープも、動線計画の一部としてデザインされており、視線が自然と奥へと誘導されるように工夫されています。

また、石川県産材を活かした仕上げや、地域の伝統技術を現代的に表現したインテリアは、ローカルな文脈と建築をつなぐ橋渡しの役割を果たしています。特に閲覧席周辺の木ルーバー天井や、ファブリックスペースの柔らかな光の演出は、建築と居心地の良さを両立させた好例です。

まちづくりへの貢献

石川県立図書館の建築は、単なる公共施設を超えて、まちづくりの核として機能しています。立地は金沢市郊外の「本多の森公園」近くで、周囲の緑と連続するランドスケープデザインが施されており、散策の延長として図書館を訪れる人も多くいます。

また、館内には子ども連れの家族や若者、高齢者、研究者など、さまざまな人々が自然に共存できる空間が用意されています。地域イベントやワークショップも頻繁に開催され、住民参加型のまちづくりを支える拠点としても機能しています。

図書館の新築にあたり、周辺インフラの整備や交通動線の見直しも行われており、図書館を中心としたエリア全体が「文化・学び・交流」のゾーンとして生まれ変わりました。

訪問時の楽しみ方と注意点

建築見学の視点から訪れるなら、ぜひ朝や夕方の時間帯に訪れてみてください。自然光の入り方が時間帯によって変化し、建築空間の表情が刻々と移り変わる様子を楽しめます。

館内撮影は可能なエリアと制限があるエリアがあるため、受付で確認しておくと安心です。閲覧席や学習スペースは静かに利用されているため、マナーを守って見学するよう心がけましょう。

まとめ|知と建築が交差する、新しい公共空間

石川県立図書館は、建築的にも社会的にも大きな意義を持つ施設です。地域の資源を活かし、まちと人と知を結び直す新たな試みが詰まった空間は、建築好きだけでなく、すべての来訪者に新しい発見をもたらします。

金沢を訪れた際には、兼六園や21世紀美術館と合わせて、ぜひ立ち寄ってみてください。静かで開かれたこの場所が、きっとあなたの旅をより豊かなものにしてくれるはずです。

概要:石川県立図書館

住所:京都府京都市左京区上高野東山55
web:https://www.library.pref.ishikawa.lg.jp/
設計:株式会社環境デザイン研究所
施工:清水・豊蔵・表・寺井・双建特定建設工事共同企業体

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