近年、一級建築士などの有資格者が多い60代が全国的に退職することにより建築に関わる各会業界が一斉に資格者不足になり、若年層の資格取得が社会的に求められています。そんな中一級建築士の試験は二級建築士と合わせて年々難化されていると言われ、以前の勉強時間以上の学習が必要とされています。皮肉にも落ちたら何も残らず、受かったら一生一級建築士というのが制度上の規定です。まず試験を受ける前に相手を知ることから始めましょう。今回は合格率20%をきる難関、一級建築士の学科試験の内容をご紹介します。
一級建築士・学科試験の構成と得点
学科試験は二級建築士の4教科に対して1教科増えて5教科の構成。二級建築士で計画・設備とひとまとめになっていものがそれぞれ独立してさらに深い知識を必要となります。その他の構成は変わらず1-計画、2-設備、3-法規、4-構造、5-施工です。二級建築士は各教科25点の合計100点満点でしたが、一級建築士の特徴として各教科の配点が異なることにあります。1-計画20点、2-設備20点、3-法規30点、4-構造30点、5-施工25点と合計125点と各教科によってばらつきがあります。例年の合格ラインは90点、93点ほど取れば確実と言われます。二級建築士は全体の60%が合格ラインですが一級建築士の90点は全体の72%と高得点を取らないといけません。それに加えて各教科の過半以上を取ることが必要。二級建築士と同様で合計でも得点を取りつつ、苦手なものも残してはいけないのが試験の難しいところ。各教科ごとに解説していきます。
1-計画 - 20点
1-計画は建築概要論、計画論、身体寸法、都市計画、建築作家論など二級建築士と類似していますがより深くより広い知識が必要になります。とくに一級建築士の職能として必要な不特定多数が使用する建築に関わる知識や、大規模建築に関わる特別な法例など新たな要素が増えます。作家論なども類似したものから少しの特徴の違いを捉えて正誤を判断する必要があり、細かな知識も充実させることが大事です。
2-設備 - 20点
2-設備は設備設計、温熱環境、音響設計、色彩計画などから出題されます。特に近年の建築におては省エネルギーの観点が重要視されることが多いため、出題もそれに沿ったものが多いです。設備の教科上の特性から自然現象や物理現象の基本原理を捉えることが高得点に繋がります。結果の暗記でどうにかなる二級建築士とは出題が質的に異なりますので、原理原則の理解を徹底しましょう。
3-法規 - 30点
3-法規は5教科のなかで唯一、建築基準法例集を試験会場に持ち込んで良い教科です。つまり答えが載っている本を持ち込めます。一見簡単そうに見えますが受験者が最も苦手とするのは法例集には膨大な法令が難解な表現で羅列していること。法令文特有の難解な表現は現代の生活ではあまりないことから、まずはざっと何がどこに書いてあるかを理解をすることから始めましょう。過去問題を3周ほど解くと、高得点帯で安定してきます。問題を見ただけで法例集を引かず解けるぐらいになるまで特訓しましょう。また、近年法改正したところはとても出題の確率が高いです。法改正の内容は過去5年分チェックし、周辺の法令チェックし問題を実際に解くなどして対策しましょう。
4-構造 - 30点
4-構造は構造計算、材料特性などが出題されます。例年、最初の6問はほぼ必ず構造計算問題が出題されます。理科系が苦手な方は何度も学習して対策しましょう。大規模建築の構造計算ルートは普段の業務上慣れない人にとってはとても難解です、遠回りにしろ根本原理の理解が何より本番で力になります。
5-施工 - 25点
5-施工は工事管理、工程管理、品質管理、材料管理から出題されます。施工は普段工事監理などで現場にいることが多い人にとっては答えやすく当たり前のことですが、現場に出る機会がない人にとっては想像しづらく難しいです。資格塾などでは動画などで理解することが現場を知るのに良い手段なので積極的に使いましょう。
二級建築士に比べて量・質ともに難易度が上がる
一級建築士の学科試験は二級建築士に比べて量、質共に全く違うといって言いぐらい難易度が上がります。時間は限られているので効率的に優先度をつけて学習しましょう。そして配点が異なるので配点が高い科目を得意にすると有利です。法規、構造が配点30点なのでそこで25点づつ取れればあとは残りで40点程度取れば良くなり非常に有利に進められます。おすすめの学習は高配点の法規、構造を先に取り組み高得点を出しやすくすること。また法規は難解であるため時間がかかりがち、さらにどの教科にも共通することがあるのでマスターすると他教科にもメリットがあります。
今回は一級建築士学科試験を解説させて頂きました、とても難易度が高い試験ですがしっかり対策すれば何回やっても合格点を取れるようになります。出題範囲が広いので対策がこんなんです。今年で決めるという意気込みで最低半年前から対策を始めていきましょう。苦手なものを後回しにせず、目の前の課題を一つ一つ理解していくことが合格に繋がります。